HOME > アトピー > アトピーの方が冷えるのはみせかけの冷え?
2008年05月20日
アトピーの方で皮膚が真っ赤で熱感があるのに「冷える、冷える」とおっしゃる方がいます。こういう方に温める漢方薬を出しますとかえって悪化することが多々あります。またステロイドを急にやめたときのリバウンド状態の時も肌は真っ赤なのに寒気がします。温めるとどうして悪化するのでしょうか? そのカギは皮膚にあります。アトピーで「皮膚が真っ赤」だということは「熱」が体にこもっているからです。
中医学では症状を判断するのに常に「寒熱」のバランスを重視します。では「熱」がこもっているのにどうして「冷える」のでしょうか?
中医学の言葉で「真熱仮寒」(しんねつかかん)と言います。以前、上海中医薬大学の皮膚科の名医 秦 万章先生について皮病を学んでいる時、このことを質問しましたら、ひとこと「真熱仮寒」と書いてくださいました。お互い言葉はあまり通じなくても中医学の言葉を一言書くだけですべて分かり合えることが出来、感激しました。本当は「熱」があるのに「仮の冷え」「みせかけの冷え」がある、ということです。炎症のある皮膚に血が集まって「熱」がこもり、他に血が回らなくなり冷えてきたと考えられます。冷えるからといって温める漢方薬ばかり飲んでいたらもっと赤くなって悪化します。治したいのは皮膚ですから、まず皮膚の症状をよくみることが大事です。アトピーになってから冷えてきたのは本当の冷え症ではありません。
清熱効果のある漢方薬がまず必要です。冷えがあっても清熱をしていけばこもって熱をもった血のめぐりはよくなり、自然に冷えはとれて温かい体になっていきます。
皮膚を赤くする漢方処方には附子や人参が配合された「真武湯」「四逆湯」「通脈四逆湯」「人参湯」などがあります。もし飲んで赤くなるようでしたら、漫然と使わないことも大事です。
中医学はバランスの医学です。アトピーも「寒熱」のバランスを注意深く見ながら漢方薬、中成薬(煎じ薬以外の漢方薬)を飲んでいきますと、冷えも、赤みもとれて健康なつやつやした肌になっていきます。
次に食べ物を考えましょう。食べ物の性質は「温・熱性、平性、寒・涼性」と分けられます。皮膚が赤いときは食べ物の性質で「熱性」のものは避けましょう。トウガラシは「熱性」ですので、キムチや辛い物などトウガラシ入りのものやカレーなどは避けましょう。お酒、牛肉、ケーキ、なども体に熱をこもらせ悪化させます。
熱を取る食べ物は性質が「寒・涼性」のものがよく緑豆や緑豆春雨、緑豆もやし、すいか、梨、にがうりなどは熱を取る働きがあります。参考<現代の食卓に生かす「食物性味表」燎原書店>
ただし召しあがるときは冷たいものではなく、温めたものがいいのです。春雨スープやにがうりの炒め物など温くしていただきましょう。胃の消化酵素は37度前後で働くので冷たいものは胃の消化を悪くし、結果、皮膚を作る力を弱めます。
果物は寒い時期は冷蔵庫から出したばかりの冷たいものは避けましょう。基本的には和食の粗食で温かいものと考えていけばいいでしょう。中国では夏でもウーロン茶は熱いものを飲んでいます。冷たいものを飲む人はいません。中国の人は一般的に胃腸はとても丈夫ですし、アトピーもほとんどいません。但し最近はファーストフード店などが増えたためかアトピーがぽつぽつ出てきました。自分の国の昔からの食生活を大事にして、胃腸を丈夫にしていくと肌はつやつやしてアトピーも良くなっていきます。
文責;薬剤師 国際中医師 植松光子